2014年05月05日

気の毒アイスコーヒー

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私は作家の楡山小朗太。
年1で取材と偽って、旅行に行く。
今年はどこに行こうか、近所の「気の毒カフェ」に行って
旅行パンフを繰りながら、暖かくなってきたからなのか
アイスコーヒーがメニューに載っていたので頼んでみた。
それはそれで冬の間は出ないだろうと思ったなのか
アイスコーヒーをおいてないのだ。
なんて気の毒な店だ。
冬だって存外アイスコーヒーを飲みたい時だってあるだろう。
それを突っぱねているのは、あまりにも気の毒だ。
5日ぶりに私以外の客が入ってきて、アイスコーヒーを頼んだのだが
「すいません…暖かくなってからじゃないアイスコーヒー作れないんです…」
平に謝っていた。
そんな光景をみていると、気の毒なのは従業員じゃなく、
このお客だな。と得心した。
そんなこともあったので、
メニューに手書きで「アイスコーヒー」と書かれていたので
小躍りして頼んでみた。
相変わらず、味は上手くも不味くもない。
むしろ普通でもない。
なんか薄味なのだ。
氷が多いのか?
コーヒー豆が悪いのかすら分からない。

それでも、アイスコーヒーを飲みながら旅行パンフを見ていると
いつものひそひそ声が聞こえてきた。
黄「以前旅行に行ったら、カツアゲされて、
有り金全部持っていかれたって?お気の毒に」
緑「え?地元のやくざに観光料として、
有り金全部と住所まで言わされたの?なんてお気の毒に」

遠回しに旅行に行くことをくさしているようで、気分が悪くなった。
私は特に観光目的で旅行に行くのではない。
地方地方の夜の街を歩いて、痛い目になったり、
今回は大丈夫だったりと修羅場をくぐるのが好きなのだ。
だから、多少の危険は顧みない。
ふと、私が一番気の毒な人間じゃないかと頭によぎる。>
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2014年04月22日

陰影ラーメン


気の毒カフェの並びにラーメン屋がある。
赤い暖簾が下がった、扉を横へガラガラっと開ける、
古いタイプのラーメン屋。

店が西に向いているからか、
夕方には通りに面した窓からオレンジ色の陽がよく入る。
差し込む夕陽が強ければ強いほど、
店内はますます憂鬱になる。

オレンジの光は同時に強い影も作りだし、
客がすするラーメンに盛られた野菜でさえ影を落とす。
野菜の左側はまぶしいほどなのに、
右側は絶望的な陰影だ。

店に話し声は一切なく、
ひたすらにラーメンをすする音だけが響く。
食べ終われば皆、ラーメン代金きっちりをテーブルに置いて出ていく。
誰一人として釣銭が必要な額を出さない。
代金きっちり。
店主はありがとうございましたの一言もなく、
空いた皿をさげ、客が置いた代金をレジへ入れる。

陰影ラーメン380円

壁に書かれたメニューにはこれしかなく、
客は注文すらしない。
下を向いたまま丸椅子に座り、
何も言わずじっとしているか、
たまにため息が漏れるだけ。

店主はいらっしゃいませすら言わず、
順番を守ってラーメンを出すだけ。

やがて日が沈むころになると客足は途絶え、
ガランとした店内は蛍光灯に煌々と照らされる。
もはやそこに陰影はなく、オレンジ色の憂鬱も消え去った。

店主は調理場から出てくると
カウンター席の一番奥に腰掛け前掛けを外す。

白い光を発するラーメン屋に客が来ることはなく、
店主は暇をもてあましている。


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2014年01月27日

それはそれはお気の毒に…

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気の毒カフェの二人はいつもひそひそ話をしている。
客がいるにも関わらず、こちらには聞こえない声で何かずっと神妙な顔をして
ひそひそと、時にため息まじりで何かを話している。
その話声が気になって気になって仕方なくなった。
私は作家の楡山小朗太だ。
作家と言っても基本はアルバイトをしている。
今年で44歳になる私は週に数回駐車場の警備の仕事をしている。
大体夜勤で二日間拘束される。
それでも慣れたもので、ペースさえつかめばこんなに楽な仕事はない。
今までそんなに危険な目にもあったことないし、完全にマニュアル化されているので
逆に毎日が退屈で仕方がない。
ビルの巡回中も小説のことを考えていれば、時間が経つのもアッと言うまだ。

そんな疲れた体や脳を癒すために「気の毒カフェ」で気の毒ブレンドを飲んでいると
ヘルメットをかぶった店員のひそひそ話が気になった。
何か私についての悪口でも言っているんじゃないかと気を揉んでのことだが
注意深く彼らの話声を盗むように聞いてみた。
(幸いと言うか普通じゃ考えられないがこの店にBGMはかかってない
何故BGMをかけないのか?と聞いてみたら有線に払う金がないということだった。
なんて気の毒な店なんだ)
シーンと静まり返った店内で意識を彼らのひそひそ話に耳を集中させると
黄色ヘルメット「そうなんだ。四十肩で?腕が上がらなくなったんだ?それはお気の毒に」
緑ヘルメット「そちらこそ、膝の軟骨すり減ってるんだって?お気の毒に…」

二人の気の毒な体の不調の話だった。

何せよコーヒーが不味くなるからひそひそ話はやめて欲しい。
というか、せめてBGMくらいかけてくれ。

気の毒な店だ。
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2013年10月21日

続・気の毒カフェ

続気の毒カフェ.JPG
私は作家の楡山小朗太
何年か前に「魔法高校3年B組」というライトノベルを一冊描いたことがある。
それ以来、一度も仕事の依頼がこない。
それでも、依頼のない仕事の為、短編、中編、長編と書き溜めた作品は数多い。
無論、出版社に持ち込みにも行くが箸にも棒にもとはこのことだ。

私が執筆するのは決まって近くの喫茶店だ。
風采の上がらない二人の男性が店を切り盛りしている。
切り盛りするほど毎回お客はいない。
いつも私だけのような気がする。
気分がのって、周りが見えなくなって、10時間くらい筆を進めていても
帰れ空気も出さないで、私を静かに見守ってくれる。
無論、コーヒー一杯で10時間いるのだが。

コーヒーが美味いかと言われれば、別段美味くも不味くもない。
普通。
多分私が家で淹れたコーヒーとさほど変わりがないであろう。
しかも場所も表通りから外れていて見つけづらい。
何故こんなところでお店を?的な所にある。
だからと言って馴染みの客がいるわけでもなさそうだ。

気の毒な店だ。

私はこの店に気の毒カフェと名づけることにした。
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2013年01月17日

気の毒カフェ


もしお店を出すなら「カフェ」だ。
名前は「気の毒カフェ」
我々のように、いろいろなものが抜け落ちて
何も増えやしない輩が集まる。

いらっしゃいませのかわりに
「こんな店ですいません」。
注文を聞いたら
「それはお気の毒に」。

コーヒーは人生のごとくほろ苦く。
店内は電球色の照明で。

(写真・気の毒な私たちが気の毒な感じでお迎えします)
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