2006年10月27日

革命前夜の夜(サバチョー版) vol.2

vol.2「新宿を血に染めて」

ついにその日は来た。
以前から小池君と約束していた東京へ行くこと。
その日は新宿で大きなデモ活動があるということらしく
小池君も緊張と興奮でいつも以上に目が血走っていた気がする。
僕はといえば久しぶりに行く東京にワクワクしながら
ピンクレディーや長嶋がいるかなとか観光気分丸出しだった。
前日がちょうど論文提出の期限で
「家畜における豚肉の消費率」
の論文に頭を抱え込んでいた。
僕は豚が好きだ。
家畜として豚が豚肉として消費されることに
複雑な気持ちを感じていることは確かで
豚がもう少し人と近しい存在になれないか考えていた。
無論そんなことでは農業大学の畜産科に所属している人間としては
言語道断なわけだが、毎日食べられることを分かっていても
熱心に育てなければいけない。
食べられてしまう豚達に可哀相な気持ちが芽生えてきてしまうのだ。
そもそも家畜とは一体なんぞや?
などとその頃には言い出してしまっていた。
しかしとんかつも食べるし生姜焼き定食なんて大好物だ。豚が好きと言いながら。
豚肉を腹いっぱい食べることに違和感も罪の意識もなかった。
しかし自分が育てた豚を食べられることが出来るのか?
そして自分が育てた豚が豚肉になりそれに気づくことが出来るのか?
そんなことをいつも考えるようになってしまった。論文は一向に進まない。
窓の外で小池君が呼ぶのが聞こえる。
もう約束の時間はとっくに過ぎていた。
僕らは駅で待ち合わせをしたけど、いつまでたってもこない僕に業を煮やし
小池君が迎えに来た。
僕は抱える頭を置いて、今は何よりこの友人と東京に行くことが
一番大事だと言い聞かせた。
いつものように家族にばれないように窓から外に出て小池君と東京に向かった。
もう電車もなく夜は静かに秋の気配を感じていた。
小池君は黙って線路の上に降りて歩いてでも東京に向かうようだった。
僕も線路に降り小池君の後を追った。
歩きながら小池君は日米安保に関することやベトナム戦争のことや
毛沢東のことを教えてくれたが、僕は歩き疲れと明日までの論文のことに
頭が一杯で何が今世界で起こっていて、日本の学生がなにをそんなに
むきになってデモをしたりストをしたりしているのかさっぱり分からなかった。
豚や牛は毎日殺され食べられる。そのことのほうが僕には深刻で重要だった。
流山市から歩いて新宿まで行くのにどれくらいの時間が経ったであろうか。
夜は明けてもまだ目指す新宿は遠いように思われた。
僕達も話につまり最終的にはしりとりをしながら歩いていた。
到着したのはもうお昼に近い時間だった。
午前11時の新宿は破壊活動が行われていた後はあったが、
もうそこにはデモも騒乱も何もない虚無としての西口広場でしかなかった。
小池君は「間に合わなかった…」と一言つぶやいた。


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2006年10月25日

革命前夜の夜(サバチョー版) vol.1

踏ん切りがつかない60年代
世の中が学生運動吹き荒れる頃、
流山農業大学畜産学科にやってきた一人の風雲児の物語である。

vol.1『嵐を呼ぶ養豚場』

僕が小池君と出会ったのは豚の飼育の実習の時で
普通は作業用のみんな汚れてもいい格好で来るんだけど
そのとき小池君はその頃流行していたサイケファッションに身を包み
サングラスに長髪で豚小屋にやってきたんだ。
始めは完全に勘違いしている変な人だと思っていたけど
一生懸命先生の話は聞いているしメモまで取ってる。
豚にも愛情を持って世話をしていて僕は好感が持てたんだ。
買ったばかりのサイケファッションも汚れ汗で
長髪を濡らす小池君に好感以上の何かを感じていた。

その頃東京の大学ではロックアウトが行われていて
学生が校舎を占拠したりストライキを起こしたり街頭で
デモ活動を行ったりし始めていたんだ。
でも概ね一部の有名な大学(T大学W大学とかね)が多くて
エリートって考え方が違うんだなぁ。なんてまるで他人事のように感じていた。
テレビではピンクレディーが大人気で僕もミーちゃんに熱をあげていたんだ。
王や長嶋が球場で大活躍していてみんなテレビに夢中だった。
僕達の大学ではロックアウトも閉鎖もなく毎日を牛や豚の世話で忙しくて
学生運動なんてまるで興味もなかった。
ただ小池君だけは違かった。
小池君は学校を休みがちになり毎日のように東京に行っては
色々なセクトの人達に会い語り合い、喧嘩しあい、マリファナを吸ったり、
歌を歌ったり、酒を飲んでいるらしかった。
二日酔いで学校に来た時は僕を掴まえて東京での話しを聞かせてくれた。
東京で機動隊と戦って歯を折られたことや逃げる途中に機動隊に捕まって
袋叩きにあったことを面白おかしく話してくれた。
東京で出会った女の子のことも艶っぽく童貞の僕に話してくれた。
毎日豚や牛の世話に追われている僕にとって小池君の話は
まるでアメリカのハードボイルド小説のようにドキドキして僕は…
小池君がとても羨ましかったんだ。
そして…僕も小池君と一緒に東京に行くことになるんだ…。


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2006年10月24日

きっと、愛してる

私の彼氏は鼻をよくかむ。

花粉症ではないのだが年中鼻をかんでいる。
冬でも夏でも春でももちろん秋でもだ。
家にいるときは箱のティッシュを大事そうに抱え込み、
外出するときもポケットティッシュを何個も持ち歩いている。

「なんでそんなに鼻水がでるか?」
と一度ただの好奇心で聞いたことがある。

「そんなにかんでる?」

「すげーかんでる」
所在なさげに箱ティッシュと私を交互にみやりながら
「そんなに?一般的な見地からみても多い?」

「多い」と私。

本人にしてみれば普通はこれくらいみんなかむものだと思っていたらしい。
特に冬場になるとかんだティッシュの多さは山に雪が積もったように
ゴミ箱の頂きにティッシュがうず高く積みあがっている。

本人曰く
「多分、気温の変化が著しい場合に鼻水は特に多くなるのでは…。
 外から室内に入ると鼻水が出る。
 だから電車に乗って暖房がきいてると決まって鼻をかむな。
 夏でも同じ現象が起こるんだ。電車の中は冷房で寒いだろ?
 外に出ると暑いからまた鼻水が出るんだ」

どうでもいいことを熱っぽく語ってくれる。
私が鼻水について尋ねてから自分でも、
なんでこんなに良くかむのかを考え出したのだろう。

鼻についての本を買ったりして鼻の構造を学んでいる姿をみたことがある。

この人と付き合って2年くらいは経った。
大学生の時にコンパかなんかで知り合い酒も飲まないで
朗々と藤子不二雄の漫画について熱っぽく語ってくれた。
どこが気に入ったさっぱり分からなかったが、
何日かして私から連絡をして何度か食事をするようになり
お互い付き合っている人もいなかったので何となく付き合いだした。

「加奈子、多分俺は人の鼻より形があんまり良くないんだよ。
 こう、この中が何か変な感じで曲がってんじゃないか?」

鼻の前骨を撫でながら目を中央に寄せている。
寄り目になっている顔が面白い。

「うーん。一度耳鼻科でも行ってみたら?」

「それは嫌だよ。特に不自由してるわけじゃないし。
 医者にみせて重大な病気だったらへこむだろ?」

「でもさ、ティッシュ代だってバカにならないよ?
 あんたの場合へたしたら1週間で箱ティッシュ1箱使い切るじゃん」

「そんなにかんでる?」

「すげーかんでる」

「経済的圧迫をかけてしまっているかな?」

「そうだね。たまに嫌な気持ちになる。
 それになんで一回鼻をかむのに二枚使うの?」

「一枚だとちょと不安だから」

「一枚でかめよ」

彼は東京近郊に実家があり、
東京に上京してきた私のアパートに今は住み着いている。
二人ともバイト暮らしのものだから彼が家賃を三分の一を出し、
半同棲のような奇妙な形で私の家に寄宿している。
毎日いるわけじゃないがとにかく冬場はお湯を使い過ぎるし、
電気も鬼のように消費する。
「せめて光熱費だけでもいいから出せ」
と私もけち臭いことを言ってみた。
すると彼は三分の一を毎月収めるようになった。
それからは電気も点けっぱなしで寝てたり。
夏場は冷房をつけて寝て、「寒過ぎる」と文句を言い出す。
勝手なのだ。

私はその頃大学を卒業したが就職する気もなく
イラストレーターのような仕事をしていた。
ちゃんとした依頼ではなく半端な仕事や穴埋めなどで絵を描くことがあった。
稿料はたいしたこともないし、これ一本じゃ生活も出来ないので
週に何回かだけ客の全然こない喫茶店でウェイトレスをしていた。
投稿も持込もしたし路上で絵を売ったりもした。
成果も何も得られない日々が続いた。
彼は大学を卒業出来ずに一年ダブった。
親からすればせっかく大学に入ったのだから
卒業するまで辞めさす気はないらしい。
本人は平気で「もう一年遊べる」と本気で思っているらしい。

計画性がないのだ。

私達の付き合いも3年目になり、
いつ果てるともしれないこの先の人生を考えると眠れない夜を過ごすこともある。
私はまだ若く世界にはいくつもの可能性があると考えたり、
結局、私には何も見つけられずに可もなく不可もなく人生が終わるんじゃないかとも思う。
不安にさいなまれるときに、何度となく彼の寝顔をみて涙を流すこともある。

結局、怖いのだ。

誰も何も言ってくれない。

問い詰める勇気もない。

最近は彼と口を利くことが少しだけ嫌になった。

家に帰らないで友達の康子の家に泊まりに行ったりしている。
残業なんかしなくてもいいのに、バイトで無理くり残業させてもらったりしている。
彼が家にいないことを見計らって帰ったりしている。

自分でも何をどうしたいのか答えが出ない。
別れることってこういうことなんだろうな。と思ったりもしている。
それでいいんだと。思うようにもしている。

結局、怖いのだ。

形のないものを信用できるほど子供じゃないのだと思うように自分に言い聞かせている。

どうしようもないほど太陽が高く、冬だというのにポカポカと暖かく、
猫も路上に止められたスクーターの上で昼寝をしている。
康子の家から自分の家に帰る。
世界は平和で、私は一人で平和の世界に馴染めずに疎外感を感じながら家路を急ぐ。

薄汚れたコートのポケットから、家の鍵を取り出して、
ドアノブを恐る恐る開けて、彼の靴がないことを確認して中に入る。
テーブルの上に無造作に鍵を投げ出してベットに目を向ける。
起きてそのままどこかに出かけたらしくて、
掛け布団も毛布もベットの下の方に溜まっている。
タバコの臭いで部屋が臭い。
飲みかけのペットボトルが蓋もしないでテーブルの上に置いてある。
しかもコーラ。
「はぁ…」
ペットボトルの下に紙が置いてある。筆圧の強い字で、
『うまく言えないが、きっと愛してる』と書かれている。

台所に行ってやかんにお湯を沸かす。
インスタントのコーヒーをカップに入れてお湯が沸くまで、
何だか涙が出てきてしょうがない。
沸騰した蒸気がやかんの先端から勢いよく噴出し、
お湯が沸いていることを告げる。
湯気が充満した台所は小さな世界で満ちている。
鍋にも、フライパンにも深い思慮が存在しているのだろう。
私と彼のこの小さな台所的な世界で、私はまだきっと必要とされているのだろう。
冬なのに暖かな春のような世界では私は受け入れられないかもしれないけど、
湯気で充満した湿気まみれのこの台所的世界平和に受け入れられているのだ。

部屋を片付けて、彼の帰りを待って私も彼に伝えよう。

「私もきっと愛してる」と。


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2006年10月19日

若葉

若葉は思いっきり自転車を漕いでいた。
新緑の空気を胸一杯に吸い込んで、息を切らし、自転車を漕いでいた。
季節は初夏で心地良い風が吹き、空は青く、澄み渡っていた。

沿道の脇には木々が生い茂り、初夏を運ぶ風が鼻をくすぐった。
暖かな陽射しの中、若葉は自転車のペダルをこぐ。
空気は澄んで道の脇の木々は豊な緑の葉が生い茂っている。
風は心地良く僅かに夏の匂いを感じる。
道は平坦で加速を上げて若葉は自転車を漕いだ。

「車ってさぁ、自転車よりも早いのかなぁ」
それが若葉の口癖だ。

僕はその時19歳で無敵だった。
日本経済は長く続いてる好景気でバイト生活で充分食えた。
その頃の僕がみる世界は誰もが無責任で、
誰もが猥褻で全ての物事は金で解決していた。
高校を出てからバイトで貯めたお金で車の免許を取りに
自転車で高台にある自動車教習所まで通っていた。
カラオケ屋のバイトは時給も高くて、客足も好調で売り上げが良い日は
特別ボーナスまで出ていた。
就職した友達もどこも給料は高く、
毎晩飲みに連れてってくれては奢ってくれた。
進学した友達も仲良くしていたし世界は自分達の為にあり、
世の中は自分達中心で回っている気がした。

若葉とは教習所で知り合った。髪は短くて肌は白く透き通っていた。
学科で何回か同じ時間になった事もあり、
教習所特有の空気の中で次第に顔見知りになり
キャンセル待ちを一緒にしたり、帰る方向が同じだったこともあって
仲良く話すようになった。

「車の方が早いに決まってるよ。自転車なんかよりも早いし、
原付バイクより早い」
僕は若葉に何度もそのことを言い、
車が成し遂げた革命的な偉業を語りかけた。

「そうかなぁ…」

下り坂に差し掛かり足をペダルから離し、
大きく開いて猛スピードで坂を下っていく。
後に遅れている僕に大きな声で
「自転車、こんなに気持ちいいのに!」
僕も遅れて下り坂を足を離し、猛スピードで駆け下りる。
風は夏の匂いを宿し、僕の毛穴の隅々まで入り込んでくるようだった。
空を見上げると青い空が見えた。
坂の下で待つ若葉に
「とっても気持ち良いでしょ?」
と言われたが僕には原付バイクで走るほうが早いと思った。

生来の面倒くさがりが講じて教習所にも行かなくなり、
免許を取得する期限が過ぎようとしていた。
若葉はちゃんと通っていて、僕よりも遅く入校して
僕よりも早く卒業しそうだった。
自転車で通うことも面白くない学科を受けることも
19歳の僕には我慢できなかったようで、
日々友達と遊んだり、バイトばかりに明け暮れていた。
教習所の期限が半年間でまだ学科も実技もおっつかなく、
半クラも満足に出来ないでいた。
再入校の可能性あり。
最初からやり直しの状態になるのだけは何としても避けたかった。
何とか教官を泣き落としてハンコをもらい仮免までたどり着いた。

若葉ともしばらく会っていない。
連絡をする手段が教習所に行くしかなく、なかなか会えずにいた。
もうとっくに卒業しているかも知れない。
そういえば、僕は若葉のことを何も知らない。
家がどこかも、恋人がいるかも、苗字が何だったかも、
もしかしたら年齢さえも分からなかった。
ただ、自転車で坂道を下るのが好きで、
車の免許を取りにきていることしか分からなかった。
キチンと教習所に通うようになってから
坂の上で若葉を待ったこともあったが、結局会えずにいた。
もう、二度と会えないのか。
そんな想いが頭をよぎりながらブレーキをかけながら坂道を下った。

季節は秋から冬へと移り変わろうとしていた。
日本経済は膨れ上がった泡が弾け軒並み壊滅的な打撃を受け、
銀行は金を貸さなくなり回収もままならない状態に陥った。
バイト先のカラオケ屋は客足が途絶え、
規模縮小の為シフトを削られるようになった。
景気の良かった友達は金周りが悪くなり遊ばなくなった。

風は冷たくて自転車で通う教習所も遠く感じられた。
若葉にもあれから会えずにいたし僕はもう無敵じゃない気がした。
若葉の顔も忘れかけていた頃、路上の最終試験の時に
自分が運転する教習車から若葉が自転車で走っているのを見かけた。
助手席には厳しいで知られる50代の鬼教官でよそみも脇見も許されず、
彼が横に着いたらまず合格は無理と教習所でも評判だった。
それでも何とか最後の最後まで減点されずにきていたし、
若葉に声をかけるなんて絶対に出来ない状況だった。

サイドミラーに映る自転車に乗った若葉が角を曲がって行く。
声をかけることも、存在を知らせることも出来ぬまま会えなくなってしまう。
もう二度と会えない気持ちが強くなっていく。
寂しくて儚くて、胸が張り裂けそうになった。



空はどんよりと曇り、雨の匂いがした。
車の免許も無事に取得し、今は営業の仕事をしている。
世界は不景気を脱して回復になるとカーラジオからニュースが聞こえる。
僕は33歳で無敵でも何でもないただの人になっている。
結婚もしていないし、今は仕事を覚えることと
人付きあいを大事にすることで頭が一杯だ。
車で行く先々で坂道を自転車で足を広げて坂を下る女性を見ると
若葉なんじゃないかと思ってしまう。


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2006年10月18日

「武士は食わねど高楊枝」
なる言葉があるように武士とは常に誇り高き存在なのである。
いかように公衆の面前であってもそれは高貴で骨太でいなくてはいけない。
私も無論、男子であるからしていつも武士道を重んじている次第である。
あれは20代も半ば、ある女性とお付き合いをしていたときのことである。
その日、私はその彼女の家に泊まり同じベットで夜を共にしていた。
それは素敵な時間であっただろう。
夜も更け眠りについた私達は重なり合うように眠っていた。
そして私は夢を見た。
橋の欄干から放物線を描き川に向かって放尿している夢を。
モノクロの夢だったが細部を今でもはっきり思い出すことが出来る。
私は子供で白いランニングに白ブリーフを履いていた。
頭は丸刈りで田舎の子供のようであった。
夏だったらしくモノクロの太陽はギラギラと全てを照らしていた。
真昼の太陽を真上に受け、橋の欄干から川目がけて放尿をするのは
気持ちが良く罪悪感も羞恥心もなかった。
そこには夏の日の遥かなる歴史の中で川に向かって放尿するその軌跡だけが
まざまざと描かれている。
「オレと空と川と放物線」なんてタイトルがつくくらい見事な放尿シーンである。

どのくらい時間が経ってもその放尿は収まらない。
むしろ時間は永遠を刻むかのように止まってしまっているかと思われた。
止まってしまったくらいの時に目が覚める。
それはおねしょとして彼女にかかっていた。
びっくりする私。

気づかない彼女。

たたき起こす私。

起きる彼女。

泣き出しそうになる私。

泣いている彼女。

止まらないおしっこ。

ここで泣き叫んではいけない。男らしく、武士らしく一言



「出ちゃった…」



その一言で全てはケリが着く。
別れの朝、何も言わない彼女の背中が小さく震えていた。

そう、オレはおもらし侍


posted by ポンコツ惑星 at 17:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 流山ダビデ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする